漢字・第9回 追加十二則
さらに細かいところでの筆法として、ちくま新書の『日本の文字』(石川九楊、筑摩書房、2013年)に倣ってまとめてみた。これを「追加十二則」ということにする。
①折釘
折れた釘にようだから「折釘」という。口の書き方。第二画の転折以降は直角ではなく、下方を締めるように左に倒して書く。
②曲尺
「曲尺」とは大工の使うL字型の定規のこと。囗の書き方。第二画の転折以降は直角になり、垂直になるように書く。
③散水
氵の書き方。基本形は第二画が左に出て、第三画でまたもとに戻る。第一画を書いてから、第二画と第三画を続けて書く。
④綽勾
綽はゆるやか、勾はまがり。了の第二画の書き方。永字八法の弩法+趯法とはことなり、しなやかに曲がっているのが基本。
⑤玉勾
玉はまるい、勾はまがり。豕の第三画の書き方。基本的には画のなかほどで方向が変わっている。前半は右下に向かい、後半は左下に向かう。
⑥彎笋
彎はまがる、笋はタケノコ。心の第三画の書き方。飛雁の起筆部分を省略したような形になる。
⑦三撇
撇が三画ならぶ。撇とは、はらうこと。各撇は進行方向に閉じるのが基本。起筆位置も垂直にはならない。
⑧重撇
撇が重なる。撇とは、はらうこと。第一筆をねかし、第二筆をたてるようにすると安定する。
⑨烈火
四点がならぶ。角度や強弱は一定ではなく変化をつけるが、コントロールしたものでなければならない。
⑩竹籜
籜はタケノコの皮。第二画は横方向にすすんでから下方に転じるのが基本。第一画と第三画は方向、長短に変化をつける。
⑪遊魚
角度の浅い波法。魚が遊んでいるように見えることから、この名前がある。短くひっかけてから、右方向に長く引く。
⑫爪頭(参考文献にはないが、筆者が追加した)
采の頭部の筆法。第二画から第四画は散水を横に並べるように画く。