漢字・第7回 書体見本字種
書体見本字種は、次の12文字である。これは株式会社写研で使われていたものと同じである。筆者が選んだのではないが、一字一字の選定理由を考えてみた。
毛
結法では「疏法」で、字重として画数の少ない文字の基準にする。結法では均衡が取りづらい文字である。筆法の「浮鵞」の例でもある。
永
永字八法。筆法の基本である。
辺
結法では「半包囲法」(繞)の文字である。主要部首「辵部」の文字であり、筆法では刀に「獅口」と「鉤鎌」が含まれる。
紙
結法では「左右法」(二分)の文字である。筆法の点からは、糸には「蟠龍」が、氏には「搭鉤」「飛雁」が含まれている。
囲
結法では「全包囲法」の文字である。主要部首「囗部」の文字であり、筆法の点からは、囗に「曲尺」を含んでいる。
室
結法では「上下法」(二分)の文字で、なおかつ「下載上法」の文字である。筆法では「宝冠」が含まれる。
調
結法では「左右法」(二分)の文字である。主要部首「言部」の文字でもある。筆法では口に「折釘」がある。
東
結法としては「抱懐」の基準となり、「長法」の文字である。筆法では「十字二法」(横画、竪画)を含み、「掠法」と「磔法」の均衡の基準となる。
激
結法では「左中右法」(三分)の文字である。筆法では「散水」が含まれる。
機
結法では「左右法」(二分)で、なおかつ「左窄右寛法」の文字である。筆法では「飛雁」や「蟠龍」が含まれる。
闘
結法では「密法」で、竪画が多い文字の基準にする。「半包囲法」(構)の文字である。
驚
結法では「密法」で、横画が多い文字の基準にする。「上下法」(二分)の文字である。
「武英」の書体見本。まだ試作段階のものです。これからテストしながら調整していきます。
書体見本の字種は会社によって異なっている。公開されている例として、次の字種があげられる。その会社の方針が垣間見えるかもしれない。
国 永 今 酬 鷹 愛 東 袋 三 力 鬱 霊
「疏法」の「三」「力」、「密法」で画数が込み入っている「鬱」、豎画が並ぶ「酬」、横画が並ぶ「鷹」など、太さなどの造形面で統一をはかることを重視して選定されたように感じる。