活字書体をつくる

新しい活字書体として復刻するための覚え書きです。修正・加筆することがありますのでご了承願います。

書写・レタリング・タイポグラフィ

われわれが扱う文字は、書写・レタリング・タイプフェイス(活字書体)デザインの3種類に大別できる。個別の教科だけではなく、複数の教科を横断してみてみると、この3種類はすべて中学校で習っている。

 

書写

書写は、中学校の国語科のなかの書写で学習する。

光村図書の教科書『書写』において、漢字では楷書と行書を学ぶ。楷書は漢字の筆使い、漢字の字形などを、行書は点画の方向や形の変化、点画の連続という項目に加えて、点画の省略や筆順の変化も学ぶことになっている。和字(かな)では「楷書と調和するかな」「行書と調和するかな」の2書体を学ぶ。ここで重要なのは「楷書のかな」ではなく、「楷書と調和するかな」としていることである。書写の教科書には、欧字(アルファベット)のペン字で、アルファベットと数字の手本が掲載されている。

さらに資料として、「封筒・はがきの表書き」や「のし袋」などが挙げられている。これを職業としているのが「筆耕」である。「筆耕」とは、写字や清書で報酬を得る人をいう。具体的には、表彰状や感謝状、手紙などの宛名書き、式辞、記章、熨斗(のし)を毛筆で書くことを生業としている。ほかにも、卒業証書、各種目録、家系図、結婚式の招待状、宴会の献立や座席札、遺書にいたるまで多岐にわたっている。

写本は書字、手で書いたそのものである。印刷術がまだなかった時代には、1冊の本を借りて、それを書き写して複製をつくった。印刷によらない、まったく手で書いた本である。

 

レタリング

レタリングというのは、中学校の美術科で学習する。

光村図書の教科書『美術1』では「文字をデザインする」という項目で、漢字・和字・欧字のレタリングが取り上げられている。わずか二ページであるが、「自然の美」というタイトル文字を描くという例があげられている。参考資料として掲載されている。提灯の文字もレタリングである。書字は一発書きだが、レタリングは縁を取って中を塗り込むようなこともある。書写風の文字でもこのように描くとレタリングなのである。

レタリングは、一発書きではなく、縁を描いて中を塗り込むような方法によって描かれた文字である。活字とは違って、機械を使わない。

ロゴタイプは、活字を使う場合もあるが、実際に有名な企業のロゴタイプは、数文字だけを専用にデザインしたものは、タイポグラフィではなくてレタリングということだ。

木版印刷や銅板印刷は、活字を使わないで、一枚の版に、文章を彫ったり引っかいたりして印刷して、一冊の本にしていた。現在でも木版印刷で本を出版しているところがある。木の板に裏返しに紙を貼りつけて彫っていくのだ。このように、活字で組まないで、すべての文字を彫っていく。

レタリング技能検定の試験は「公益財団法人国際文化カレッジ」において現在も継続して実施され、通信教育での「レタリング講座」もある。

 

タイプフェイスデザイン

タイプフェイスデザイン(活字書体設計)に関しては、直接的ではないが、教科書の本文そのものがタイポグラフィ(活字組版術)であり、国語だけではなく、英語をはじめ、すべての教科書でタイポグラフィ(活字組版術)に接している。

光村図書の教科書『国語1』では、コンピューターの文字と書かれている。「書体の特徴」として記されているページに、コンピューターの文字にもいろいろな書体があるということが書いてある。。明朝体を「読みやすさを考えてデザインされた書体」、教科書体を「文字を書くときの見本となるように考えられたデザイン」、ゴシック体を「目立つことを優先させたデザイン」としている。

タイポグラフィというのはタイプ+グラフィである。タイプというのは活字のことである。グラフィというのは方法とか手段をあらわすことばで、フォトグラフィを写真術というように、「術」という漢字があてられている。タイポグラフィは活字組版術と訳されている。活字を使った方法がタイポグラフィということになる。

活字の顔ということで、タイプフェイスと言う。活字の、実際に紙にインキを付けて印刷する部分がタイプフェイスである。原理としてはハンコと同じだが、違うのは活字は一個ではなくて何個か組み合わせて使わないといけないということだ。ハンコは朱肉を付けて押せばいいだけだが、何らかの機械を使って印刷するという違いがある。

それをもう少し効率的にしたのが活字組版だ。活字には、鉛活字だけではなくて、木活字もあるし、タイプライターもある。写植の文字盤も広い意味では活字組版の一種だ。よく「活版」というが、それは「活字組版」を省略したものである。英語ではタイプセッティングという。

レタリングのテキストは多く発行されていたが、日本語のタイプフェイスデザインとなると多くはない。『書体デザイン』(桑山弥三郎著、グラフィック社、1971年)、『文字をつくる』(中村征宏著、美術出版社、1977年)があげられる。

筆者がタイプフェイスデザインを学んだのは、新入社員として写真植字システムのメーカーに就職してからである。原字制作の職場で約三ヶ月間の研修をうけたが、このカリキュラムが書体制作の原点であり、今でも有効な方法だと思っている。

 

最近、デザインで文字を扱うのは全部タイポグラフィだと書かれている場合もあるが、書字とかレタリングは全然違うものなのだ。タイポグラフィとは、活字を使うということが前提条件になる。