活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

白澤がくる

2015年ごろ、勉強会の写植文字盤プロジェクトで、体験学習のために「白澤中明朝」「白澤太ゴシック」「白澤太アンチック」の書体見本を作成した。書体見本12字を48mm角の専用下書き用紙に鉛筆で描き、フィルムに墨入れをして原字とした。これを縮小して簡易文字盤(四葉)に貼り込み、手動写真植字機PAVO-KYでテスト印字まですることができた。

 

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この時、近代明朝体、ゴシック体とともに、漢字書体としてはあまり馴染みのないアンチック体を試作している。

  • 東京築地活版製造所の見本帳で、「五號明朝」、「五號ゴチック形文字」とともに、「五號アンチック形文字」が掲載されていること。
  • 写研の手動写植機文字盤に「石井横太明朝」があり、この書体について、佐藤敬之輔氏が『ひらがな 上』(丸善、1964年)のなかで「要するに漢字を加えたアンチック体である」と書いていること。
  • 写研のレーザー式電算写真植字機用デジタルタイプとして、「本蘭ゴシック」ファミリーとともに「本蘭アンチック(発表時は本蘭A明朝)」ファミリーが企画されていたこと。

以上のような経緯を踏まえて、近代明朝体、ゴシック体と並ぶ主要書体として、漢字書体のアンチック体を確立しておこうと思い、あえて試作しておくことにしたのである。

 

勉強会では、写植文字盤を製作して、テスト印字まで行ったところで終了したのだが、さらにデジタルタイプとして継続していこうと考えた。デジタルタイプ化にあたり、書体名を「白澤明朝」「白澤呉竹」「白澤安竹」に変更した。漢字書体は漢字表記にしたかったからである。

もうひとつ、『タイプフェイスデザイン漫遊』(今田欣一著、株式会社ブッキング、2000年)で試作していた「欣喜明朝W3」「欣喜ゴシックW3」という書体があった。ここで「欣喜アンチックW3」は、漢字書体を試作していなかった。

このふたつを原点にしながら、デジタルタイプとして新しいイメージで作ってみようと考えた。混植する和字書体は「きたりすロマンチック」「きたりすゴシック」「きたりすアンチック」を想定している。また欧字書体は試作している「Vrijheid Serif」「Vrijheid Sans」「Vrijheid Slab」と組み合わせる。

まずは「白澤安竹」から始めて、「白澤明朝」「白澤呉竹」へと展開していくことにした。

 

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ファミリー化することを睨んで、「白澤安竹」のライト・ウエイトとブラック・ウエイトの2ウエイトで書体見本字種12字を、専用の下書き用紙に鉛筆で描いてみた。ファミリーとしての一貫性をあらかじめ確かめておこうというのが狙いである。下書き用紙は、A4サイズの用紙に48mm角で12文字が入るように作っている。

漢字書体としては、48mm角で下書きをするのがやりやすいと感じる。慣れというのもあるが、これ以下だと、特に筆法や結法が描ききれないのである。本文用の書体では、ルーペなどを用いて、縮小して確認しながら進めていくことにする。