活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

和字・第1回(2) 「おゝはなぶさ」「おゝくれたけ」「おゝことのは」の原資料

…… 「おゝはなぶさ」の原資料は、『少年工芸文庫第八編 活版の巻』(石井研堂著、博文館、1902年)です。 「おゝくれたけ」の原資料は、『活版総覧』(森川龍文堂活版製造所、1933年)の12ポイント角呉竹体活字、「おゝことのは」は『辞苑』初刷(新村出編、…

漢字・第1回(2) 「美華」「伯林」「倫敦」の原資料

…… 「美華」の原資料は、『旧約全書』(美華書館、1865年)です。 「伯林」の原資料は、『座右之友』(東京築地活版製造所、1895年)所載の「五號ゴチック形文字」、「倫敦」は「五號アンチック形文字」です。 (参考:『座右之友』所載の「五號明朝」) …………

欧字・第24回 ファミリー

…… ウエイトの展開 活字書体のファミリー化で一般的なのはウエイトの展開である。和字書体、漢字書体に準じて、欧字書体も同じウエイト名にしている。 最近では、Thin, Light, Regular, Medium, Thick, Demi Bold, Bold, Extra Bold, Ultra Bold、Black, hea…

欧字・第23回 混植

日本語フォントにおける欧字書体は、漢字書体、欧字書体との混植で初めて確認できる。とはいえ、最近では観光地のリーフレットでも日本語版と並んで各国語版が用意されているし、また日本語と各国語を並べてレイアウトすることもある。日本語フォントの欧字…

欧字・第22回 検査

…… 欧字書体は、欧米各国語が組めるようにさまざまなテスト出力をおこない、チェックを繰り返す。 全数出力(タイプサイズ) 全数出力では、いく種類かのタイプサイズで出力し確認する。書体の制作目的に応じて、推奨すべきタイプサイズを集中的に見ることに…

欧字・第21回 キリール文字(Cyrillic)

…… キリール文字は、主にスラヴ語派を表記するのに用いられる文字である。現在もキリル文字が使われている言語は、ロシア語・ウクライナ語・ベラルーシ語、ブルガリア語・マケドニア語などである。モンゴル語でもキリール文字を使用している。 日本では、特…

欧字・第20回 ギリシア文字(Basic Greek)

ギリシア文字とはギリシア語を書き表すために用いられる文字で、現代ギリシア語では24文字からなる。ギリシア文字を言語の表記に使用するのはギリシア語のみである。 ギリシア語以外では記号としてさまざまな用途に用いられる。とくに箇条書きなどの順序数で…

欧字・第19回 フルピッチフォント

…… full-pitch (normal) font 日本語の文章で、おもに記号としてもちいるための、字幅を全角固定にしたラテン文字を制作する。大文字、小文字、数字、記号類が含まれる。記号として使う場合に限られ、単語や文章では使わない。 基本的には、プロポーショナル…

欧字・第18回 スモールキャピタル

…… スモールキャピタル(small capital)とは、スモールレター(小文字)と同じハイト(高さ)で作られた、キャピタルレター(大文字)と同じのフォルムの文字である。スモールキャップ(small caps)ともいう。 文章中で会社名などの長い単語が出てきた場合…

欧字・第17回 アディショナル・グリフ2

…… 通貨単位記号、アットマークなど dollar(ドル) $ cent(セント) ¢ pound(ポンド)、lira(リラ) £ florin(フローリン)、guilder(ギルダー) ƒ yen(円) ¥ euro(ユーロ)€ currency sign(国際通貨記号) ¤ at(アットマーク) @ number sign(…

欧字・第16回 アディショナル・グリフ1

…… リガチュア ligatures リガチュアとは、fi,flのように複数の文字をつなげて1字として制作するグリフである。ぶつかりを解消して読みやすくするのが目的である。 一般的に単体のfやiとは違う字形になる。つまり、ffのバーがつながっていることや、iのドット…

欧字・第15回 表記符号

…… パンクチュエーション・マーク period ピリオド 一般的に、小文字iのドットと同型にし、少し大きくする。その形状は、書体によって●、■、◆などがある。 comma カンマ 一般的に、periodに尾が付いたような形になる。または、斜線のような形になる。尾は十…

欧字・第14回 ダイアクリティカルマーク

…… アクセントや発音を区別するためにダイアクリティカルマーク(Diacritical marks)が必要になる言語がある。 ダイアクリティカルマークにはつぎのような種類がある。 Grave グレイヴ Acute アキュート Circumflex サーカムフレックス A, E, I, O, Uおよび…

欧字・第13回 フィギャア

…… ローマ数字(Roman numerals)とアラビア数字(Arabic numerals) 数字には、ローマ数字(Roman numerals)とアラビア数字(Arabic numerals)がある。 ローマ数字はラテン文字のI,V,X,L,C,D,Mをそのまま組み合わせて表記するので、数字として新たに制作…

欧字・第12回 スモール・レター

…… スモール・レター(small letters)は、小文字のことである。ミナスキュール(majuscule)ともいう。金属活字では、活字ケースを植字台の下部に立てかけたことから、ローワーケース(lower case)と呼んでいた。 フランク王国・カロリンガ朝の国王である…

欧字・第11回 キャピタル・レター

…… キャピタル・レター(capital letters)は、大文字のことである。マジュスキュール(majuscule)ともいう。金属活字では、活字ケースを植字台の上部に立てかけたことから、アッパー・ケース(upper case)と呼んでいた。 キャピタル・レターの源流は、ロ…

欧字・第10回 カーニング

…… Kerning カーニング サイドベアリングの設定が終わると、カーニングの設定をおこなう。カーニングとは、特定の文字の組み合わせだけを調整する作業である。 例えば、TokyoのTとoの間のように、サイドベアリングの調整だけではどうしても空いて見えるよう…

欧字・第9回 スペーシング

…… letter spacing レタースペーシング 文字が並んだときに、文字と文字との間隔(レタースペース)がないと読みづらいので、適度な間隔に調整することを指す。文字のデザインが完成しても、スペーシング次第で台無しになる可能性がある。書体設計としての評…

欧字・第8回 ディテールの調整

‥… 欧字書体においては、ディテールの調整が重要なポイントである。「錯視調整」とも「視覚調整」とも言われ、多くのレタリングのテキストでも書かれている。 1 文字の黒みを合わせるために、線の太さを調整する。(blackness) サンセリフ体の場合、同じ数…

欧字・第7回 ウィドゥスとカウンターの設定

…… タイプサイズ 活字の高さのことをタイプサイズという。現在は金属活字由来のpointと、日本の写真植字由来のQで表される。デジタルタイプのpointは、正確に1/72inchである。 ウィドゥス(width) 活字の幅のことをウィドゥスという。ウィドゥスは、字幅に…

欧字・第6回 ハイトとラインの設定

…… 1 baseline 大文字H、小文字nなどの仮想の並び線。OやVなどは視覚的に揃って見えるようにベースラインより少しはみ出すようにする。 2 cap-height and x-height キャップハイトはキャピタル・ハイトの略。Hなどの大文字の高さのことで、上部の並び線を…

欧字・第5回 エレメント

…… 1 エレメントの名称 次のような名称がある。 Stem(幹) Bowl(椀) Arm(腕) Foot(足) Spine(脊柱) Ear(耳) Shoulder(肩) Tail(尻尾) Bar(桟)、Crossbar(横木) Spar(垂木) Loop(輪) Apex(頂点) Peak(先端) Terminal(末端) Ver…

漢字・第24回 展開

…… ウエイトの展開 デジタルタイプでは、近代明朝体、ゴシック体を中心にして、Tn(シン=Thin)、L(ライト=Light)、R(レギュラー=Regular)、M(メディウム=Medium)、DB(デミボールド=Demi Bold)、B(ボールド=Bold)、EB(エクストラボールド=…

漢字・第23回 混植

…… 漢字書体だけの文章 漢字書体だけでの文章組みとしては、『千字文』が挙げられる。千字文とは、中国・梁の時代に、武帝(在位502年―549年)が周興嗣に命じて作らせた、文字習得のための教材である。 1000字の異なる漢字を一度の重複も無しに組み合わせて…

漢字・第22回 検査

…… 校正用出力 漢字書体の場合、誤字や異体字となっていることがある。制作中は文字のデザインに集中しがちになるのだ。まったく違う部首になっていたり、線が一本多かったり、とんでもない間違いが見落とされたということも経験している。 字体の基準となる…

漢字・第21回 偏と旁の関係

…… 文字(文と字)の成立段階は、「六書」という表現でまとめられる。六書とは、漢字の成り立ちと使い方の基本的な原則で、象形・指事・会意・形声・転注・仮借という六種類がある。このうち、転注・仮借は、漢字の使い方に関する原則である。 象形とは物の…

漢字・第20回 大きさの調整

…… ひとことで大きさの調整といっても、易しいことではない。 活字書体の学習の第一歩として、まず◆、■、▲、▼のように図形で練習する。◆に対して、■は小さくしないと同じ大きさにはならない。どのぐらいのい大きさにするのかを感覚的につかむ練習をするので…

漢字・第19回 太さの調整

…… 書体見本に「鬱」「酬」「鷹」を入れている活字書体の制作プロダクションがある。 漢字には「三」「力」「今」といった画数の少ない字種から、このような画数の多い字種もある。「三」「力」「今」と「鬱」「酬」「鷹」の画線を同じ太さにすると、文字全…

和字・第24回 展開

…… 字面サイズの展開 写植の石井明朝体には、字面率が大きい「大かな」、字面率が小さい「小がな」というファミリー展開があった。 この考え方はデジタルタイプでも多く踏襲されている。標準(ノーマル)に対して、大かな(ラージ)、小がな(スモール)を制…

和字・第23回 混植

…… 活字書体は実際に文章を組んでみなければ評価できない。書体の出来栄えを判断するには文章組が必要である。和字書体のイメージは、漢字書体、欧字書体との混植で初めて確認できるのである。 和字書体だけの文章 和字書体だけでの文章組みとしては、まず「…