活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

2019-01-01から1年間の記事一覧

フレイヘイド(Vrijheid)の風が吹く

できれば従属欧文ということばは使いたくない。日本語フォントは、和字書体・漢字書体・欧字書体が対等な関係だと考えて設計しているからだ。だから、たとえ日本語フォントの中の欧字書体であっても、「フレイヘイド(Vrijheid)」のように固有の書体名をつ…

欧字・第1回 復刻、翻刻、そして新刻(欧字書体)

…… 復刻(活字→活字) 筆者が仕事として取り組んだ欧字書体も復刻から始まった。写植書体の「ヘルベチカ」ファミリー、「オプチマ」ファミリー、「ユニバース」ファミリーである。いずれもサンセリフ系の書体で、「ヘルベチカ」と「ユニバース」はグロテスク…

セリフとサンセリフとスラブと

…… 『図解で知る 欧文フォント100』から 『図解で知る 欧文フォント100』(スティーブン・コールズ著、akira1975監修、田代眞理翻訳、ビー・エヌ・エヌ新社、2019年11月)は、定番の欧字書体から100書体を厳選し、16種類のスタイル別に分類し、書体の特徴を…

きたりす、ひらがなとカタカナ

個人的なルールとして、 「漢字」に対して、「和字」、「欧字」という。 「漢文」に対して、「和文」、「欧文」という。 「真名」に対して、「仮名」(万葉仮名、真仮名、草仮名)という。 とはいえ、なかなか割り切れないのが現実だ。せめて、「平仮名」は…

和字書体・漢字書体・欧字書体

日本語書体は、おもに、和字・漢字・欧字の三つの文字体系で構成されている。中国語では漢字が中心である。西欧の各国語は欧字(ラテン文字)が中心である。 日本語書体を設計するときには、これを全部作るのであるが、欣喜堂では和字書体がベースで、漢字書…

白澤がくる

2015年ごろ、勉強会の写植文字盤プロジェクトで、体験学習のために「白澤中明朝」「白澤太ゴシック」「白澤太アンチック」の書体見本を作成した。書体見本12字を48mm角の専用下書き用紙に鉛筆で描き、フィルムに墨入れをして原字とした。これを縮小して簡易…

きたりすの亜種

『タイプフェイスデザイン漫遊』(今田欣一著、株式会社ブッキング、2000年)に「欣喜アンチック」という書体を試作している。その章のタイトルは「悠久の持続性」という大げさなものだった。 筆者はずっと和字アンチック体に注目していた。アンチック体とい…

漢字・第1回 復刻、翻刻、そして新刻(漢字書体)

復刻(活字→活字) 筆者が仕事として最初に取り組んだ漢字書体は『広漢和辞典』(大修館書店)用石井細明朝体(特注)だった。写植文字盤から48mm角のサイズに拡大したフィルム原字を修整した。 仿宋体(簡体字・繁体字。日本語版の紅蘭細宋朝体は販売されて…

和字・第1回 復刻、翻刻、そして新刻(和字書体)

復刻(活字→活字) 復刻とは、書物として以前に出版したものを新しく版を作り直し、もとのとおりに刊行することである。転じて、もともと活字書体として制作されたものを、デジタルタイプとして再生することを復刻ということにする。 筆者が仕事として最初に…

和字書体からグランドファミリーを構想する

和字書体三十六景・十二勝から 和字書体三十六景・十二勝を構成する和字書体は、それぞれが独立したものであるが、これらを組み合わせることにより、グランドファミリーが構築できるのではないかと思う。和字オールドスタイル、和字ニュースタイル、和字モダ…

明朝体・呉竹体・安竹体——近代漢字書体の三系統 

「美華」「伯林」「倫敦」——「日本語書体三傑」より 金属活字書体の揺籃期の見本帳『BOOK OF SPECIMENS』(平野活版製造所、1877年)では、ローマン体の各シリーズの他に、欧字書体としてのアンチック(Antique)とゴシック(Gothic)が掲載されている。ここ…

活字・写植・デジタルタイプ

活字というのを狭い意味で考えると、金属活字、とくに鉛の活字を思い浮かべるが、もっと広い意味でとらえると、写真植字も活字の一種である。金属活字がメタルタイプというのに対して、写真植字機を英語で言うとフォト・タイプセッティングマシンになる。フ…

書写・レタリング・タイポグラフィ

われわれが扱う文字は、書写・レタリング・タイプフェイス(活字書体)デザインの3種類に大別できる。個別の教科だけではなく、複数の教科を横断してみてみると、この3種類はすべて中学校で習っている。 書写 書写は、中学校の国語科のなかの書写で学習する。…