「龍爪」の十字二法
宋代の四川地方の刊本である『周礼』(巻第九・巻第十、静嘉堂文庫所蔵)をベースに制作した「龍爪」の字様をひもといていきたい。
「龍爪」もまた横画が細く、豎画が太い。ファミリー化にあたっては、横画は細いままで、豎画のみ太くすることになるだろう。
1 横画
起筆は、少し長めである。ゆったりとした入り方が剛健なイメージへのスタートとなっている。
送筆はシンプルである。上側のアウトラインは直線に近いが、下側のアウトラインは少し弓なりになっている。つまり鋒先の通る上側のアウトラインで方向をコントロールし、筆の腹にあたる下側のアウトラインでイメージを決めているのである。
最大の特徴は龍爪と呼ばれる収筆にある。あたかも大地をつかむような龍の爪だ。横画全体は6度程度の右上がりになっているのだが、このグイッと力強く押さえた収筆によって、安定感を増している。
起筆・送筆・収筆という、毛筆書写における自然な運筆のなかで、龍爪が生まれたのである。決してとってつけたわけではない。
2 豎画
起筆は、横画以上に長くなっている。横画の龍爪に匹敵するためには、これほど長くする必要があるのだろう。
そのまま縦に力強く引き下ろしている。こちらも左側のアウトラインは直線に近いが、右側のアウトラインは少し弓なりになっている。鋒先の通る上のアウトラインで方向をコントロールし、筆の腹にあたる右側のアウトラインに緩急があらわれている。
収筆は一度力をためてから引き抜いている。「陳起」ではしっかりと押さえているが、「龍爪」ではゆっくりと下へ抜いているのである。
横画の収筆にあわせて豎画の起筆は強くなっているが、その分、豎画の収筆は比較的軽くなっている。これにより龍爪との衝突をさけて、全体的に重くならないようにしているようだ。