活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

「美華」の十字二法

『舊約全書』(1865年、美華書館)をベースにした「美華」の字様をみていきたい。『舊約全書』の本文書体は5号活字である。細部については、さまざまな解釈ができると思う。まだ試作の段階であるが、現時点での私なりの解釈によって書き進めていくことにする。

『舊約全書』の本文書体は、近代明朝体の典型とみている。近代明朝体は、これから起筆や収筆の解釈の違いにより多くのバリエーションが生まれ、それぞれが独立した書体となっている。「美華」の試作にあたっては、「武英」にみられる書写の柔らかさを、できるだけ残すようにした。

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1 横画

「武英」で横画が水平になっているが、近代明朝体「美華」においても継承されている。

起筆は「武英」とほぼ同じで、書写の名残がある。

送筆も水平で直線である。上側、下側は平行になっている。

「金陵」や「武英」と同じく、収筆にコブ状の押さえがある。「金陵」はやや彫刻的でシャープであり、「武英」ではやや丸みを帯びていたが、「美華」では三角形(鱗形)になっていると解釈した。

 

2 豎画

起筆は、「金陵」「武英」と同じく、右部は大きく膨らんで丸くなっている。「金陵」や「武英」からのカタチを継承している。

送筆の左右のアウトラインは、「武英」と同じように平行である

収筆は、送筆より膨らんでいる。アクセントというよりも、引き抜く筆法を様式化したものだろう。右側のアールが少しだけ小さい。見た目は、斜めにカットされているようになっている。