欧字・第1回 復刻、翻刻、そして新刻(欧字書体)
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復刻(活字→活字)
筆者が仕事として取り組んだ欧字書体も復刻から始まった。写植書体の「ヘルベチカ」ファミリー、「オプチマ」ファミリー、「ユニバース」ファミリーである。いずれもサンセリフ系の書体で、「ヘルベチカ」と「ユニバース」はグロテスク・サンセリフに、「オプチマ」はヒューマニスト・サンセリフに分類されている。
ヘルベチカは、欧文書体として初めてのライセンス契約に基づくものであった。ハース社から送られてきたのは活字の清刷だった。ここから原字として再現した。当時の手動写植機は16ユニット・システムだったので、全角の16等分を1ユニットとして、レターフォームとサイド・ベアリングを調整していった。
オプチマはステンペル社とのライセンス契約に基づくものである。ステンペル社から原図を送ってもらっている。送られてきたのは、ヘルベチカとは異なり写植用のフィルム・シートだった。オリジナルは18ユニット・システムで作られていたので16ユニット・システムに変換しなければならなかった。
ユニバースも、ハース社とのライセンス契約に基づくものである。ハース社から送られてきたのは、オプチマと同様に、写植用のフィルム・シートだった。
欣喜堂の欧字書体は、ほとんど復刻書体である。日本語書体を形成するために制作するのであるから、和字書体、漢字書体と同じように復刻書体でなければならないと考えたわけである。
欧字書体十二宮はすべて金属活字の書体からの復刻で、セリフ系が6書体、サンセリフ系が3書体、スラブ系が1書体、その他(イタリック、スクリプト)が2書体である。いずれも、書物や書体見本帳、広告などを原資料として、サンプル文字を抽出した。
追加で制作した欧字書体四天のうち、サンセリフ系1書体、その他(イタリック)1書体も金属活字の書体からの復刻で、書物や広告を原資料としている。
残念ながら、書物や書体見本帳、広告などの現物は所有していない。いくつかの書物に掲載された図版から、だいたいのキャラクターが抽出できたので、これをコピーして使用することにした。
※K.E.Orion DemiBoldはストロークの先端を丸くしたが、金属活字の資料を基にしているということで、復刻書体に含めている。
翻刻(書字→活字)
写本からデジタルタイプとして制作している書体は、欧字書体四天のうちの2書体だけである。これらは原資料として挙げている資料のほかに、カリグラフィのテキストを参考にして制作した。
※K.E.OphiuchusBoldは金属活字の『42行聖書』を原資料として挙げているが、抽出できないキャラクターが多く、実際にはカリグラフィのテキストを参考にした。
新刻
欧字書体フレイヘイド・セリフ(Vrijheid Serif)、フレイヘイド・サン(Vrijheid Sans)、フレイヘイド・スラブ(Vrijheid Slab)は新刻である。
新刻といっても資料をまったく見ないということではない。出島版『トラクタート(TRAKTAAT)』(ドンケル・キュルティウス編、1857年)に用いられた活字書体を参考にして、下書きから書き起こす方法で制作している。