活字書体をつくる

Blog版『欣喜堂ふたむかし』/『欣喜堂四半世紀』

和字・第5回 ひらがなのふでづかい

 

欧字書体では「ステム」や「ボウル」などエレメントの名称の図がよく載っている。それでは和字書体ではどうなるのだろうか。活字書体として総合的に記されていることは少ないようだ。

そこで書写の教科書で出てきた「はらい」「とめ」「はね」「むすび」などの用語を入れて、「まわし」や「うちこみ」などの用語も加えて、12種にまとめてみた。

 

まわし

輪を描くように回転させる筆づかい。「あ」「の」「め」のような右まわしと、「て」「と」「ひ」のような左まわしがある。太いところと細いところの描き方が緩急につながり、その書体の性格を決定する。

 

あたり

筆を突き当てること。右まわしの回転運動は螺旋状になるが、左まわしの回転運動は蛇腹状になる。「そ」「て」「え」のように、山折りと谷折りの繰り返しになる蛇腹の突き当たりの筆づかいを「あたり」という。

 

よこ

水平に、左から右に動かす筆づかい。「あ」「お」「た」「ち」のような短いものと、「す」「せ」「て」のような長いものがある。決して直線ということではなく、弓なりのカーブを描くことが多い。斜めに入る場合には、右上がりになるのが自然である。

 

たて

上から下へ動かす筆づかい。「あ」「お」「ま」「よ」などのように垂直に近いものから、「た」「え」「ん」などのように斜めになるものもある。直線ではなく、腕の使い方に従って、ややうねりを持つ。

 

はらい

横に勢いよく動かす筆づかい。「あ」「う」「け」「ち」「の」「ら」「め」などの最後の部分が「はらい」にあたる。先端に向かってだんだんと細くなっていくが、筆を動かす速度によって性格が決まってくる。

 

とめ

留めて収める筆づかい。「え」「き」「こ」「さ」「と」「て」「に」「た」などの最後の部分が「とめ」にあたる。ここで終了したように見えるが、実際には折り返し点であり、下方へつながる「はね」が省略されている。

 

むすび

輪を作り、そこに交差するようにもう一端を通す筆づかい。「は」「ほ」「な」「ぬ」「ね」「ま」「よ」「す」「む」など、はっきり突き抜けている形と、「る」「ゐ」のように突き抜けていない形がある。

 

かえし

筆を裏返すことを「かえし」という。「あ」「の」「め」「み」などの左部分では、筆を裏返して回転運動の方向を変えなければならない。そのために運筆に少しの溜めが必要になってくる。

 

はね

一度留めたところから勢いよく跳ねる筆づかいを「はね」という。「は」「に」の第1筆のように右に跳ねるもの、「ね」「れ」の第1筆のように左に跳ねるもの、「あ」「さ」の第1筆のように上に跳ね上げるものなどあり、省略される場合もある。

 

うちこみ

よこ、たての起筆で、力強い筆づかいを「うちこみ」ということにする。「楷書と組み合わせる和字」では、強くアタックして起筆することが多い。

 

はいり

よこ、たての起筆で、なめらかにそっと筆を入れることを「はいり」ということにする。「行書と組み合わせる和字」では、なめらかにレガートで起筆することが多い。

 

つながり

「さ」「き」のように、脈絡がある場合と、途中が途切れた場合がある。脈絡がない場合にも、筆が紙に接触していないだけで、空中を動いている。脈絡がある場合を「つながり」、脈絡がない場合を「きもちのつながり」という。