活字書体をつくる

Blog版『欣喜堂ふたむかし』/『欣喜堂四半世紀』

和字・第8回 カタカナはフリオロシで決まる

カタカナはひらがなと違って、次の文字につながることを前提としていない。漢字と同じように一字一字が独立している。ひらがなと音は同じであるが、形象としてはまったく異なる文字体系である。

『ひらがなの美学』(石川九楊著、新潮社、2007年)という本では次のように書かれている。

「ひらがなは連続することで、自ら言葉を形成しようとする本質があります。だからこそ仮名文(ごく少数の漢字+ひらがな)*注1が生まれた。これに対してカタカナは、あくまで漢文を日本語として開くための道具なんですよ」

現在では、カタカナも擬音語や動植物、外来語の表記などの役割が与えられ、ひらがなと同じ文字列に並べられるようになった。活字書体では、ひらがなとカタカナがセットになっている。ひらがなとカタカナを合わせて、和字書体と言っている。

そこで、カタカナも「フデヅカイ」*注2として見直してみることにした。前回で述べた通り、ひらがなとは異なる用語となった。

「ほら、カタカナってなんだか楔みたいだと思いませんか? 『ノ』が典型ですが、他にも左下に向けて楔を打ち込むような字形が多いでしょう。漢語と漢語の間をこじ開けて、テニヲハを補い、日本文をつくるのが役割だからです」

「カタカナ」は、「ノ」のような左下に向けて楔を打ち込むような字形、つまり「フリオロシ」で決まる。「ア」にもあるし、「イ」にもあるし、「ウ」にもある。カタカナの半分以上の文字に「フリオロシ」が含まれている。「フリオロシ」さえきちんとやっておけば、カタカナは書体としてうまくいくと言っても過言ではない。

「フリオロシ」はウチコミ+オクリ+ハライで構成されるが、少しゆったりしたカーブや、上から一旦まっすぐ縦に入ってから左に払うというようなカーブを描くものも含まれる。

「実は、カタカナには規範が存在しません。漢字なら初唐代の《九成宮醴泉銘》や《雁塔聖教序》、ひらがななら《高野切》や《寸松庵色紙》が基本的なお手本になるわけですが、カタカナの手本というのは無い。つまり、カタカナをどう書くべきかなんてほんとは誰も知らないんです、書道の先生もね」

 書字においては規範となる古典がないということであるが、活字書体としてのカタカナには、何らかの方向性を考えておくことは必要である。明治・大正時代の『書方手本』や『国語読本』などを参考にしている。

 

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*注1

筆者は「和文」もしくは「漢字ひらがな交じり文」ということにしている。

*注2

漢字書体は漢語で、欧字書体は英語で、和字書体は和語でというようにしている。和字書体の書体名も、できるだけ和語でつけている(例外はあるが)。このフデヅカイの用語も和語ということにする。しかもひらがなの用語はひらがなで、カタカナの用語はカタカナで表記する。