活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

和字・第11回 ひらがなのまとめかた2

1 黒さ・太さの調整――「ね」「れ」「わ」の場合

ひらがなの設計でいちばん悩むのは「ね」「れ」「わ」の左側の、「たて・はね」と、「あたり」の繰り返しの交差するところである。その部分が黒く見えがちなのでなんとか回避しなければならない。書写では問題ないが、活字書体での濃度のムラはストレスを感じてしまう。

とくに「あたり」と「あたり」の中間の部分の処理が悩みの種である。書体によって、一部を省略してしまうということもあるが、多くの書体は不自然にならないように気を配りながらできるだけ黒く見えないように調節している。

左側の部分の黒さを少なくして、右側の部分との濃度が均一になるように、太さを保つようにする。

 

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参考:『図解ひらがなの書き方 附・カタカナ』(阿保直彦・相川政行編、木耳社、2012年)

 

2 空間の調整――「め」「あ」「ぬ」「ゆ」の場合

閉じられた空間が複数存在する文字では、本文用のタイプサイズで潰れないように、できるだけ均一のアキ量にしておくことが望ましい。ただし、あまり意識しすぎると、書体の雰囲気を損ねてしまうことがあるので、全体の書風を理解した上で調整することが肝要である。

 

3「はね」の調整――「け」「は」「ほ」、「こ」「た」「に」の処理

和字ゴシック体における「け」「は」「ほ」の「たて」から「よこ」への処理も難しい。脈絡がなく「はね」が残る場合で、「たて」と「はね」を同じ太さで保つのは無理なので、細くするか、あるいは脈絡を無視して右横に向けてはねるか、思い切って「はね」をなくすか、という選択になる。

同様に「こ」「た」「に」の「よこ」から「よこ」への処理も、脈絡がなく「はね」が残る場合では、細くするか、あるいは脈絡を無視して下方に向けてはねるか、「はね」をなくすか、という選択になる。

いずれの場合でも、全体の書風を考えて判断することになるだろう。

 

4 大きさの調整

レタリングでは、並べられた文字の関係だけを見て調整すればよいが、活字書体の場合には、どのような組み合わせになっても破綻のないようにする。

簡単なようだが実際にはかなり難しい。一字一字をみていたのではわからない。組み合わせをテストして検討を繰り返すしかない。