活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

和字・第16回 促音符・拗音符・長音符

促音符

促音(「あっ」「カッ」など)であることを示すために、清音のかなに続いて小書きにする「っ」「ッ」を指す。

拗音符

拗音(「きゃ」「ミュ」など)であることを示すために、清音のかなに続いて小書きにする「ゃ」「ゅ」「ょ」「ゎ」「ャ」「ュ」「ョ」「ヮ」を指す。

長音符

長音(「アー」など)であることを示すために、清音のかなに続いてつける「ー」を指す。

なお、本記事においては促音・拗音・長音から促音符・拗音符・長音符を除いた(清音と同一の)部分、および「っ」に対する「つ」のように、促音符・拗音符と同型の文字を親字という。

親字+促音符=促音

親字+拗音符=拗音

親字+長音符=長音

促音符、拗音符と同じ形状の「ヵ」「ヶ」などを含めて、「小書きのかな」という。

長音符「ー」のことを「音引き」という。音引きは、縦組み用と横組み用、それぞれ制作する。

 

1 小書きのかな(促音符・拗音符など)

 

小書きのかなの大きさ

親字に対しての小書きのかなの比率は、決まった基準があるわけではないが、判別しやすいということを第一に考える。金属活字の時代には70%ぐらいのこともあったようだが、昨今では、75%から80%の範囲で制作されることが多い。

書体にもよるが、使用されるタイプサイズやウエイトでも異なる。本文用では潰れないようにすることが判別性を高めることになる。

 

小書きのかなの太さ

親字をそのまま縮小すると、当然細くなってしまう。親字と小書きのかなで濃度が違ってしまうとストレスになるので、少し太くして、濃度差をなくさなければならない。

均一に太くしてしまうと、狭い空間が潰れやすくなることがある。その場合には外側に太くするが、それでも狭く見える場合には、少し線をずらしてでもアキを確保しなければならない。

 

小書きのかなの位置

小書きのかなは、親字の字面に合わせて、縦組みでは右に、横組みでは下に寄せて配置する。親字の字面に揃うように(だいたい「や」を基準にすることが多い)小書きのかなの位置を設定し、それに合わせて全ての文字を移動させる。縦組みの場合には上下の位置は中心で、右へ移動する。横組みの場合には左右の位置は中心で、下に移動する。移動量は書体によって異なる。

その上で実際に全ての文字を並べてみたときに、縦組みでは左寄りに、横組みでは上寄りに見える文字があることがある。この場合には、調整する必要があるが、あくまでも組んだ上で、見た目によって判断するものである。

 

2 音引き(長音符)

 

音引きの形状

基本的にはカタカナに準拠する。終筆は、漢字でいう玉箸(しっかり留める)、垂露(軽く留める)、懸針(引き抜く)の3種類あるが、その書体のデザインによって決められる。また、横組み用の音引きは、親字が右上がりであっても、ほぼ水平にするのが一般的である。

 

音引きの長さと太さ

基本的にはカタカナに準拠する。すなわち、縦組み用は「ト」、横組み用では「エ」のヨコの長さと同じかやや短め、太さは同じに見えるようにするとよい。

ただし、標題用としてはさらに短い音引きが求められることもある。写植文字盤では、2種類の音引きを用意した書体もあった。

 

音引きの位置

縦組み用、横組み用とも、上下左右真ん中に置く。ただし、横組み用については少し下げた方が安定するという意見もある。