活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

和字・第22回 検査

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基礎的な修練を積んだタイプフェイスデザイナーでも、視点を変えることにより不具合を発見できる。最初に方向性を確立して進めたとしても、何度も試行錯誤して積み上げていき、全部完成した時にやっとその書体がわかる。

活字書体設計というのは虚像である。これは原寸種字でも拡大原図でもデジタルデータでも変わらない。フォント化され、使用されて初めて日の目を見ることになる。

制作者自身がチェックすると、どうしても細部のバランスに目が集中してしまうことがある。第三者の目が入ることも必要である。見えないところが見えてくることもよくあるのだ。聞く耳を持つことも、また必要なことである。

 

全数出力(タイプサイズ)

デジタルタイプでは、一つの字母を拡大縮小することにより、多数のタイプサイズで使用することができる。一方で、活字書体には意図する用途があり、推奨するタイプサイズがある。書籍の本文で使うために制作された活字書体もあれば、見出しで魅力を発揮する活字書体もある。

テスト出力では、いかなるタイプサイズで使ってもいいようにすべてのタイプサイズを確認せざるを得ないが、やはり推奨すべきタイプサイズを集中的に見ることになる。それ以外を見ないわけではないが、すべてを満足することは難しい。

 

全数出力(組み合わせ)

制作したすべての字種を、ある順序に基づいて、縦組みと横組み、両方で並べる。「あいうえお」順で、全組み合わせがわかるように並べることが多い。

校正と同じように赤鉛筆でマークする。チェックの方法として、画一された記号はなく、個人でいろいろ工夫しているようである。

全数出力では、ふでづかい、まとめかた、ならべかたに至るまで、破綻がないかどうか細かくチェックする。具体的には、太さが揃っているかどうか、大きさが揃っているかどうか、寄り引きがないかどうかということである。

すべてを統一するという視点は思わぬ落とし穴を生むこともある。気になるところがあると、そこばかりが気になって、それ以外のところを見落とすことはよくある。また見方によってはフラットになりすぎ、過度の修整によって「味がなくなる」ということがあるので気をつけたい。

 

確認出力

精密検査のようなものである。特定の視点で確認したい場合や、異常が発見された部位などがある場合などで行われる。和字書体では、促音・拗音・長音が含まれる単語などパターン化していることもあるが、その都度データを作成することが多い。