活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

和字・第23回 混植

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活字書体は実際に文章を組んでみなければ評価できない。書体の出来栄えを判断するには文章組が必要である。和字書体のイメージは、漢字書体、欧字書体との混植で初めて確認できるのである。

 

和字書体だけの文章

和字書体だけでの文章組みとしては、まず「いろはうた」や「とりなうた」が挙げられる。筆者は「とりなうた」を採用している。ひらがなの全ての文字を一度しか使用しないので、和字の完全パングラム(Perfect Pangram)ということができる。

1903年明治36年)に、日刊紙「萬朝報」が読者から募集していた「国音の歌」の第1等に選ばれたのが坂本百二郎氏作の「とりなうた」である。

とりなくこゑす ゆめさませ

みよあけわたる ひんかしを

そらいろはえて おきつへに

ほふねむれゐぬ もやのうち

 

鳥啼く声す 夢覚ませ

見よ明け渡る 東を

空色映えて 沖つ辺に

帆船群れゐぬ 靄の中

 七五調四句の今様体である。「いろはうた」が47文字に対し、この「とりなうた」は、「ん」を加えた48文字からなる。

 

和漢欧混植の文章(一)

漢字書体ではまず書体見本字種12文字を制作するので、これだけでテスト用の組み見本ができないものかと考えた。文字数が140字になるように考えた。

グラフィック・デザイナーの東永なつみさんは、ペガサスとユニコーンの激闘にはとても驚いたようだった。しばらくすると「わたしはもうだいじょうぶなのよ」とつぶやいて、フェンスとウォールに囲まれたアーカイブ室にこもった。そして、かわいいプレス機ときれいな毛辺紙について調べはじめたという。

※「毛辺紙」というのは、竹材を原料にした中国の書道用紙のこと。

欣喜堂の場合、基本的に漢字書体に和字書体を合わせて制作するということはない。まず和字書体ができているので、それに合わせて漢字書体を制作していくのである。

ただし、和字書体についても、小書きのかな、濁点と半濁点、主要な約物が含まれているので、和字書体としての企画段階のテストとして、この文章は有効である。

 

和漢欧混植の文章(二)

既成の漢字書体との組み合わせでテストする場合、組み見本用創作文『問わずかたりの洋酒外史』が1990年から公開されている。佐藤豊氏と故佐藤章氏が協力して作成した。

ひらがな・カタカナの全キャラクター、数字0〜9と基本的な表記符号が含まれている。横組み対応、縦組み対応があり、漢字使用の範囲を限定したものも用意されている。いずれも読み物として自立した内容になっている。

 

和漢欧混植の文章(三)

最終的には、その活字書体の制作意図によって、いくつかの文章で見ることも必要なことである。