活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

漢字・第21回 偏と旁の関係

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文字(文と字)の成立段階は、「六書」という表現でまとめられる。六書とは、漢字の成り立ちと使い方の基本的な原則で、象形・指事・会意・形声・転注・仮借という六種類がある。このうち、転注・仮借は、漢字の使い方に関する原則である。

象形とは物の形を写して図形化することで、物の形をかたどった漢字の作り方である。指事は点画の組み合わせなどによって位置・数量などの抽象的な意味を直接に表しているものである。

会意はふたつ以上の漢字を組み合わせ、その意味を合成して独立した文字とするものである。形声は音声を表す文字と意味を表す文字を組み合わせて、新しい意味を表す漢字を作る方法である。

漢字そのものの構成には階層化が行きわたっている。最も下位の階層として点画があり、点画の結合体の一例として部首〈偏・旁・冠・脚・垂・構・繞〉がある。この会意・形声が、現在使われている漢字の大多数を占める。部首はもちろん、非部首においても要素として共通の部分が多い。

欧字における単語は、漢字の会意・形声に当たると捉えられる。例えば「word」という単語は、「語」1字に置き換えられる。「語」は「言+吾」、さらに細かくすると「言+五+口」で構成されている。その調整の複雑さは、スペーシング、カーニングを超えている。

金属活字では「分合活字」というものがあった。「偏」と「旁」とを別々に用意して組み合わせて使うというものだ。そのバランスは1/2と1/2、1/3と2/3となっている。組み合わせた結果はバランスの悪いものであった。手動写植機による印字物では、文字盤にない漢字が必要な場合、該当する「偏」と「旁」をもつ別々の文字を印字して合成していたが、ぴったりにならない場合が多いのである。デジタルタイプの場合は、活字書体を制作するソフトなどを使えば調整することができるようになったが、ただ並べればいいというものではないので、漢字のバランスを見る目が必要なのは言うまでもない。

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活字書体の制作においても、合成作字は制作の合理化に有効な手法である。合成作字の利点は、①漢字書体制作のスピードアップ、②統一感が増す、ということがあげられる。

ただし、完成された文字から抜き出したものを組み合わせるので、調整が疎かにならないようにしなければならない。言うのは簡単だが、実際に制作してみるとかなり難しいことに気づく。

一番難しいのは、「偏」と「旁」の関係である。そのままで組み合わせて、一見うまくいったと思っても、「偏」と「旁」のバランスがうまくいっていない。「偏」と「旁」がくっつきすぎたり、離れすぎたりしている。さらに、個々の点画における細部の調整も忘れがちになります。注意深く見ないと見落としてしまうことだが、安易な妥協をしてしまわないように心がけておきたいものである。

そうすることによって、ひとつの文字としての一体感が生まれ、文字列として見たときの完成度につながっていく。