活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

欧字・第9回 スペーシング

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letter spacing レタースペーシング

文字が並んだときに、文字と文字との間隔(レタースペース)がないと読みづらいので、適度な間隔に調整することを指す。文字のデザインが完成しても、スペーシング次第で台無しになる可能性がある。書体設計としての評価はスペーシングが大きく左右する。

具体的には、左右のside bearing(サイドベアリング)を調整して、レタースペースを設定する。カウンターとサイドベアリングのバランスが重要である。また書体によって、ローマン体の場合には開き気味(ルーズ)にすることがあるし、見出しサイズで使われる書体の場合には詰まり気味(タイト)にすることがある。

[大文字のサイドベアリング]

まず、HHHのサイドベアリングを設定する。ステムとステムの間隔を決めるわけだ。このとき、カウンターの大きさとバランスを見ておく必要がある。つぎにOOOの間隔がHHHと視覚的に同じになるように設定する。ボウルとボウルの間隔を決めるのだ。さらに、HHOHOOHというように組み合わせて検討する。

この組み合わせを見ながら、その他の文字のサイドベリングを決めていくようにする。例えば、HAHBHCHDHのようにHで挟んだり、OAOBOCODOのようにOで挟んだりしてサイドベアリングを設定する。基本的に、BやD、Nなどの左サイドベアリングはHと同じ数値になり、CやGの左サイドベアリングはOと同じになる。

[小文字のサイドベアリング]

小文字の場合には、両サイドでステムやボウルになる文字が少ないので、やや難しくなる。

まず、HHHとnnn、OOOoooの間隔が視覚的に同じになるように設定する。基本的にはHよりn、Oよりoのサイドベアリングが狭いほうが落ち着く。さらに、大文字と同じようにnnonoonという組み合わせで検討する。nの右サイドベアリングは、左サイドベアリングより少しだけ狭くするほうが落ち着くようだ。

これに合わせて、そのほかの文字のサイドベアリングを決めていく。ミナスキュールもnanbncndnのように、nで挟んでサイドベアリングを決定していく。

[数字のサイドベアリング]

数字も、大文字、小文字と同じように、文字のデザインに合わせてウィドゥスを設定する。たいていは1のウィドゥスが狭くなる。0が広くなっている書体もある。これをプロポーショナル数字(proportional figures)という。

もうひとつの考え方として、タビュラー数字(tabular figures)というものがある。これは表組用の数字で、数字を数行並べた時、長さが同じになるようにウィドゥスが同じになっている。レタースペースが不揃いで、フォルムも変形される場合が多いので、一般的ではない。

 

space スペース

単語と単語の間に入るスペースは、文字をデザインすることはないが、ウィドゥスを決める必要がある。書体によって、そのウィドゥスは異なる。150/1000emの書体もあれば、400/1000emの書体もある。書体の読みやすさに影響する重要なグリフである。

※参考

固定スペースとしては、エムスペース(em space)、エンスペース(en space)、1/3スペース(three-per-em space)、1/4スペース(four-per-em space)、1/6スペース(six-per-em space)などが規定されている。