和字・第9回 ひらがなのまとめかた
欧字書体では、例えば「O」に比べて「E」の字幅が狭くなるということがあるし、「o」に比べて「p」のディセンダーが短くなったり長くなったりする。和字書体もそれと同じようなことが言える。
『基本かなの書き方』(多田夏生著、永岡書店、2002年)では、次のように記されている。
外形法とは、文字をその外形の特徴から、以下のように六つの種類に分類する方法です。文字を習うときには、しっかりとその形を把握しましょう。
「円形」 ゆわのめぬこ
「三角形」 あみふねろるんれえゐゑ
「逆三角形」 なとさせてそをすひ
「正方形」 おけたにはほむ
「縦長形」 うまくもりしよきちら
「横長形」 へやつかい
書写のテキストでは、「外形法」のような類型による分類がされていることがある。
『神戸大学文学部紀要(通号35)』(2008年)に掲載された矢田勉氏の「近世整版印刷書体における平仮名字形の変化」では、「字型」という用語で、大小の差、縦横の比率を説明している。
ひらがなの「まとめかた」を考えるために、「外形法」(もしくは「字型」)として説明するとわかりやすい。活字書体においても、「外形法」(もしくは「字型」)をひらがなの「まとめかた」に当てはめてみることにした。大小の差、縦横の比率の差が大きいか小さいか、ふところが広いか狭いかで、その書体の性格が決まってくる。
和字ドーンスタイル(江戸時代の木版印刷の書体)では、大小の差、縦横の比率の差が大きく、比較的にふところが狭いので、字型(外形)の差は大きいと解釈される。逆に、和字モダンスタイル(現代的な金属活字・写真植字以降の代表的な書体)では、大小の差、縦横の比率の差が小さく、ふところが広いので、外形(字型)の差は小さいと解釈される。例えば、和字ドーンスタイルでは「の」に比べて「り」は極端に縦長になっている。つまり横幅が狭い。さらに、和字オールドスタイル、和字ニュースタイル、和字モダンスタイルと、現代に近づくほど、この縦横比が小さくなってくる。
和字書体の場合、欧字書体のようにラインで揃えるというものではないし、基本的には全角なので、レタースペースが空くためにバラバラに見えてしまう。それでだんだん正方形に近づくというようになってきたのだろう。外形(字型)の差が時代の書体の特徴を受け継いでいるとも考えられる。
なお、『ひらがなの書き方』(阿保直彦・相川政行編、木耳社、2012年)では、類型化はしていないが、「字形」として一字一字を説明している。