活字書体をつくる

Blog版『活字書体の仕様書』

欧字・第8回 ディテールの調整

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欧字書体においては、ディテールの調整が重要なポイントである。「錯視調整」とも「視覚調整」とも言われ、多くのレタリングのテキストでも書かれている。

 

1 文字の黒みを合わせるために、線の太さを調整する。(blackness)

サンセリフ体の場合、同じ数値で描くと、横線の方が太く見える。横線を細くすることで、同じ太さに見えるようになる。どのぐらい細くすればいいのかは、その書体ごとに異なってくる。何%というような数値で決められない。数値に頼らず、見た目で判断するのが一番確実な方法である。

AやVのようにふたつの斜線が重なるところでも、太さの調整が必要である。斜線が交わるところの黒い三角形ができて重くなってしまうのだ。交わる部分の内側を食い込ませて重なりの面積を減らして重さを回避する。ふたつの線を少し離して重さをとる手法もある。N、M、W、Yなども同様である。Kの重なり部分も黒さが強くなるので、線を離すなどの工夫が必要になってくる。

 

2 線の視覚的なズレを解消するために、交点を調整する。(intersection)

例えば、太い線を斜線が貫くとき斜線がつながって見えないというのは、錯視の典型的な例としてよく挙げられる。この場合には、つながって見えるように斜線を大胆にずらすが、その程度は線の太さや角度で変わってくる。

とくにXの場合、ふたつの斜線を交差させただけでは、まったくつながって見えない。交差を大胆にずらして繋がって見えるようにする。さらに交差点を上げてバランスを保ち、交差点の黒さをとるために内側から細くする。

 

3 自然な運筆になるようにする。(stroke)

欧字書体では、円弧と直線をつないで構成される文字、あるいは円弧と円弧をつないで構成される文字がある。このつなぎ目にカドができて不自然になってしまうことがある。この調整も必要なことである。

Uのように円弧と直線をそのままつなぐと不自然になる。半円ではなく、張りのある円弧に補正する。D、B、P、Rなども同様である。

Oの場合には、円弧と直線をつなぐと不自然になるので、この直線と思われるつなぎの部分もゆるい曲線にしている。Q、C、Gも同様である。

Sは円弧と円弧の組み合わせで、自然なつながりをつくることが難しい文字である。これは一概には言えない。文字を反転させたり、裏返しにしたりして、確認しながら制作する。